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接見
弁護士 A
α弁護士事務所
「先生、お疲れ様です。どうでした今日の接見」
「どうもこうも、嘘ばっかりで…話しにならないよ。終始一貫して正当防衛を主張してるが、旦那は気が弱くて虫も殺さない人柄で、DVとはもっとも縁遠いと周囲の人間が口を揃えて証言してるし、それに刺した包丁は旦那の遺体から随分離れていた場所に普段は収納されてた。いつでも手に取れるよう、その日は準備していたとしか考えられない。娘は随分前から虐待されてたようで食事も十分に与えられず、3歳児の平均体重には、はるかに及ばない7キロ前後だったそうだよ。それに、娘の死亡推定時刻は午後4時。旦那はその時まだ会社で仕事中だ。社員全員が証言してる。旦那には莉々ちゃんは殺せないんだよ。正当防衛を主張するにはあまりに無理があるからね。本当のことを話して貰わないと弁護出来ないと説明した上で精神鑑定を進めたのだが…自分はまともだ!嘘つきは自分ではなく、旦那の方だと……精神鑑定も受ける気は無いとさ、こっちはお手上げだ」
「でも、このままだと…かなり重い刑になるのでは?」
「そうだな…反省もしていないし…2人の人間を…少なくとも1人は計画的に…殺害している事実を考えれば…無期懲役あるいは死刑も有り得る。ともかく、被疑者が弁護士を信頼せず真実を話せないと言うのであれば、この仕事は辞退するしかあるまい」
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