5·4·3歳

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5·4·3歳

 とある幼稚園の入園式。一部の富裕層のための園とも言えるここは必然的に園児が少ない。  今年度の新入園児は年長組に8名、年中組に18名、年少組にはたった4名。各家庭で子どもの世話をする者や教育する者が揃っている家庭が多いので園に預ける必要がないのだ。  しかし大人の社交の場として利用したい者や、兄弟姉妹がいないため同年代の子どもとの触れ合いを求める者、小学校入学前の親離れ子離れの練習とする者が1年か2年通う事が多い。そのため年少組は無い年度もあるが今年度は4名。    すでに在籍する新年長12名と新年中4名が小さな手で一生懸命に手拍子する中を、新入園児が緊張の面持ちであったり、キョロキョロしたり半べそかいたりしつつホールに入場してくる。  競うように着飾った保護者も見守る中、一人の女の子が入り口で立ち止まってしまった。先に入場した子たちに比べても一際小柄な女の子は年少だろう。可哀想に足がすくんでしまったのかもしれない…近くで見守っていた先生が女の子に手を伸ばした時、パタパタっという足音がしたかと思うと小さな影が3つ素早く女の子に駆け寄り、2つは女の子と左右の手を繋ぎひとつは前に立つと女の子のふわふわのくるんとした髪を撫でた。髪を撫でた男の子が一番大きいようだ。その子がすっと進行方向を向いた時…あっと一瞬、皆が息を飲んだ。女の子に駆け寄った3つの影は大きさは違えど同じ顔立ちで、その余りに大人びた端正な顔立ちと堂々とした佇まいにホールにいる全ての者が見惚れた。そしてその一瞬の静寂をとても幼い可愛らしい声が揺らした。   「こーき、こーま、こーや、ありがと」
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