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歌詞を書き終え、ぐっと伸びをしながら欠伸をひとつ漏らす。
スマホで時刻を確認し、自室を出てベランダで一服しながら暗くなりかけた空をぼんやり眺めていると、真尋がピンク色の小さな箱を持って窓の隙間からひょっこりと顔を覗かせた。
「お疲れ様。この間ファンの子に桜の紅茶のティーバッグ貰ったんだけど飲んでみない?」
「へえ、もうすぐ春だもんな。でもその前に買い物行かないと夕飯作れないわ。冷蔵庫の中からっぽ。」
「そうだった!行こっか。」
「ん。じゃあ、紅茶は夕飯のときな。」
煙草の火を消し部屋に戻ってポケットに財布だけ入れコートを羽織り先に外で待っていると、暫くして出てきた真尋は綺麗な青色のロングジャケットを着てマフラーを口元までしっかりと巻いていた。
もうすぐ春とはいえ、夜はまだまだ冷える。
「ふっ、温かそうだな。」
「あー!なんで笑ったの!」
「似合ってるなぁ、と思って。可愛いよ。」
「そこは格好良いって言ってよね!」
頬を膨らませて拗ねる姿がまた可愛らしいと思ったけれど、本気で怒られそうなので言うのは止めておいた。
鍵を閉める真尋のクリーム色のふわふわした髪を後ろからくしゃりと撫で、何事もなかったかのような顔をしてアパートの階段を降りる。
やっぱりマフラーをしてくれば良かった、とほんの少し後悔した。
「なんかデートみたいだね。」
「スーパー行くだけ、だけど。」
「あはっ、まあね。それもまた恋人っぽくて良いじゃん?」
「確かに、そうだな。」
街灯に照らされた仄暗い道を並んで歩く。
繋ごうとして伸ばした俺の手を先にぎゅっと握り、此方を見てへらりと笑った。
改めて恋人だと言われると、ちょっと照れくさい気持ちになる。
「鮭と春キャベツと新たまねぎとアスパラ。それと牛乳に生クリーム..パスタの麺ってまだあったっけ?」
「あるよー。明日は余った牛乳と玉ねぎとアスパラに、鶏肉とブロッコリーとプチトマトとカボチャを足してグラタンね。あ、チーズ買わないと。」
「良いね。卵も買っておくか。明後日は親子丼な。鶏肉余るだろ。」
「野菜も沢山あるしスープも作れそう。」
それから10分程で店に着き、相談しながら数日分の食材をカゴに入れていく。
今までは食事をするのが面倒で食べないでいることが多かったけれど、それを知っていた真尋は俺に食へ興味を持たせようと色んな物を作ってくれたり、料理の仕方を教えてくれたのだ。
そのおかげで食事が少しだけ良い事のように思えてきた。
「もう買う物ない?」
「うん、大丈夫ー。」
「それじゃ、帰るか。」
「だね。」
会計を済ませ、カゴいっぱいの食材を半分に分けて袋に詰め込む。
それを1つずつ持ち、今度は俺から真尋の手を握った。
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