第27章 現在

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 つらつらと考えていると、あかりから声を掛けられる。 「藤代くん」 「ん?」 「……さっきの話、半年後くらいでもいいですか」 「どの話?」 「連絡先の話です」  あかりが顔を上げる。普段の表情に戻っている。今からのことを考えて動揺しているのかとばかり思っていたら、全く別の、茂と自分のことを考えていたと知り、高志はあかりの顔を見つめる。 「もっと早く、多分年度内に細谷くんは連絡をくれると思いますけど。半年後なら、お二人の気持ちも落ち着いて、新しい生活にも慣れている頃だと思うので」 「……待った方がいいって矢野さんは思うの」  高志が聞き返すと、あかりは頷いた。 「細谷くんも理由があって連絡先を変えたのでしょうし。それを私が邪魔してしまうのも違うのではないかと思って……少し時間をおいた方がいいかもしれません」 「……うん」 「ただ、もしかしたらその頃には、藤代くんの方でも気が変わっているかもしれませんが」  そんなことはない、と言い掛けた言葉は、しかし口からは出ないままに消えた。時間の経過が及ぼす効果を、高志はもう知っていた。半年経てば、茂ですら過去の思い出になるのだろうか。それならいっそその方がいいのかもしれない。この執着が消えて、楽になっているのなら。 「だから、もし半年後にまだ知りたいと藤代くんが思っていたら、連絡してください。その時は必ずお伝えします」  今連絡しても、きっと茂は受け入れられない。今すぐ茂に会いたいと思うのは高志の勝手な思いだった。茂にとっては辛過ぎて切り捨てるしかなかった、今のままの関係なら、消えてしまう方がいいのかもしれない。  でももし、半年経ってもやっぱり茂に会いたいと思えていたら。その頃には茂の気持ちにも整理がついていて、また笑って高志のことを受け入れてくれるだろうか。また二人で新しい友人関係を築くことができるだろうか。 「分かった。そうするよ」  高志がそう言うと、あかりは頷き、そして笑い出した。 「ふふ。細谷くんの言ってたこと、半分当たって半分外れましたね」 「え?」 「藤代くんが引き受けてくれたのは当たり。でも理由は外れ」  何故か嬉しそうに、あかりは続ける。 「ただ優しいからというより、細谷くんのためでしたね。引き受けてくれたのは」 「……」  高志が何と答えるべきか迷っていると、あかりは、「じゃあ、連絡先を交換しましょう」と言った。あかりは既にスマホを手にしているので、高志も取り出す。ラインを交換した後、念のためお互いの電話番号も送信しておく。 「では、半年経っても必要だったら連絡してくださいね」 「分かった。6月な」 「はい。上手く連絡が取れるといいですね」  個人的には番号が役に立つ方が嬉しいです、と笑いながら言うあかりに、高志も自然と顔が綻んだ。そして穏やかな気持ちで言葉をかける。心からの感謝の言葉を。 「俺もそう思う。……ありがとう」 (完) 
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