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駄菓子屋
太陽の日差しの強さと蝉の鳴き声がうるさいの、なんとかならないかな。星井蘭は、小学校の下校途中一人とぽとぽと歩きながら思う。威圧感のある鉄塔の横を通って、庭の大きな垣根民間を通り過ぎると、駄菓子屋がある。道より少し一段奥にあって少し薄暗い。
というのも店の奥に二畳ほどの畳に腰の曲がった小さなお婆さんが店番をしている。
どこからか歌謡曲が聞こえる。
そんな駄菓子屋を横目に蘭は、家に帰る。
ランドセルを玄関に置いて、机の上に置いている貯金箱からお金を取り出して、急いで靴を履いて、玄関を出た。太陽が眩しい。
アゲハ蝶が蘭に止まろうとしている。
200円を握って駄菓子屋へ向かった。
額に汗をかきながら、歩く。駄菓子屋に着くと店番のお婆さんだけで、蘭はひとり何がほしいか迷った。
店のお婆さんは、「こんにちは、とか。いらっしゃい、よく来たねなんて言わない。
黙って畳の所で大きな虫眼鏡で新聞を読んでいるらしい。
私でも騙せるかな?とふと蘭は思った。静かで薄暗い店。蝉の鳴き声がひたすら聞こえるだけだ。誰もいない。
これだったら近いしいいだろう。そおっと箱の中の小さなガムをポケットに入れた。
何も起こらなかった。騙せた!
ゆっくり店を出て蘭は、走った。走って、走って。
神社の池に着いた。ザリガニがいた。池に近づいて水面に映る自分の顔が見えた。
反省した。
「お婆さん、ごめんなさい。お婆さんの大事な店のものを黙って取ったりして。もうしません」蘭は、水面に映る自分の顔を見てそう誓った。
駄菓子屋にはそんな思い出がある。紙風船とカレーせんべいを選ぶ我が子を見て、蘭はそう思った。
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