人間って怖いね

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 今日は五月の中旬。東京はけだるい雰囲気に包まれた。  由紀はアイスコーヒーをちびちび飲み、愛人との夜を楽しみにしていた。  彼女を不貞に働かせたのはただの欲求不満だった。彼女は淫婦の才能があったのだろう。  夜愛人の腕の中に納まると、小さな口で胸元に軽くキスをした。そして腕の中で少女になった。  その時、隼人からまたメールが来た。  ありがとう、  もう意味が分からなくて、既読スルーした。  愛人はセックスをする中で、大きな声を出すように命令した。指示された通り、由紀は大きな声を出しながら、セックスに夢中になった。そして終わると、愛人が一台のノートパソコンを取り出し、画面を展開させた。  そこには彼と愛し合った動画が、ネットにアップロードされていた。  愛人はこれはダークウェブだと教えた。 「君はもう社会的に終わっている。ネットに君の恥辱が晒されている」  由紀は愕然とした。 「君の旦那が、君を売り渡したんだ。もちろん金目的でね。これから君の人生は、変態野郎の道具になることだ。いいね? ここに君専用の携帯があるから、これで取引した客と性行為を行うんだ。君は娼婦の才能があるよ。僕は君と寝て、一度も楽しいと思ったことがなかったけど」  そう愛人が話すと、隼人からまたメールが来た。 「ありがとう」  そしてそこには綺麗な女性が添付されていた。 「君が裏切ってくれたおかげで、上等な女が手に入ったとさ。これで一件落着だね。ああ、そうそう、言い忘れていた。僕たちはダークウェブの人間で、一般的な善意とかそんなもの持ち合わせていないから。君が客を満足させることが出来なくなったら、君は終わりだよ。きっとその綺麗な顔をずたずたに切り裂いてから、殺されるだろう。ダークウェブの客たちが君を見つめているよ。では僕からも一言」  由紀は泣いていた。そして心が急に苦しくなった。 「わたしの何がいけなかったの?」 「ん? 君の存在自体がいけなかった。それだけ。ありがとう」  由紀は殺されないように、変態どものおもちゃになりながら、犯されるたびに、「ありがとうございました」と言わねばならなかった。そんな由紀も、美貌が廃れたとたん、捨てられ、処分され、大きなショベルカーの中で、ゴミと一緒に扱われ、土ぼこりにまみれて、ゴミ捨て場に捨てられた、とさ。
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