華葬

どうしても死ぬ前に､会っておきたい人がいる｡
凛太朗の元恋人である､緒方大智さん｡
年齢は二つ上で､サークルの新歓で行った飲み屋でたまたま声を掛けられたのが出会いだったらしい｡
まだ付き合い始めたばかりの頃､今までに同性の恋人がいたことはあったのか気になり聞いてみたところ､彼についてぽつりぽつりと話をしてくれた｡
声のトーンや表情で､そのとき未練があることに気付いた｡
聞かなければ良かった､と思ったのを覚えている｡
それから暫くして､隠すように､それでいて大切そうにしまわれた､ツーショット写真を家に行った際に偶然見つけ､これがきっと元恋人なのだろうと思った｡
何も気付いていないふりをして深掘りしなかったのは､無理に忘れる必要はないと感じたからだ｡
いつか思い出さなくなるその日まで気長に待てば良い､そう考えていた｡
一番が彼だったとしても､俺が凛太朗を愛している事実は変わらないし､二番目でも愛してくれていることはちゃんと伝わっていたから｡
でもこんなことになるなら､問い詰めて強引にも忘れさせてしまえば良かったんだ｡
どうして彼じゃなきゃ駄目だったのか､どんな人物だったのか､実際に会って確かめたい｡
だから俺は最期の時間を､彼を見つけ出す為に使うことにした｡
きっと凛太朗だって何度も探しては逢えないを繰り返していたんだと思うから､限られた時間の中で見つかるかどうかは分からないけれど｡