さよなら、初恋。

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「まさか、有り得ない..」 俺はいつの間にか、直哉に友情以上の感情を芽生えさせていた。 素の自分でいられるのは直哉の隣だけ、これからも傍に居たい、初めて好きかもしれないと思った時には、居心地の良さや、卒業が近づく寂しさがそう感じさせているだけだと考え直せた。 それがいつしか、長い睫毛が綺麗だとか、柔らかそうな唇に触れてみたいだとか、独り占めしたいだとか、同性の友人には決して抱かないような感情で心にモヤが掛かるようになった。 馬鹿げてる、勘違いだ、そう何度も自分に言い聞かせるも、そうすることによって余計に直哉への好意を意識し、想いは強くなるばかり。 そして数ヵ月が経ち、何も言えないまま卒業式当日を迎えてしまった。 大学生になり通う場所が違えば関わる人も変わり、いつしか直哉は俺を忘れていくだろう。 このまま気持ちを伝えずに離れてしまったら、きっとずっと後悔する。 「..俺、直哉のこと好きだよ。」 「俺も好きだぞ、親友だと思ってる!って、どうした急に。寂しくでもなったのか?」 「..ちがっ..いや、そうかも。」 「はは、可愛い奴。大学が違っても、いつだって会えるだろ?」 駅のホームに横並びになって電車を待ちながら、俺は意を決して情けなく震える唇を開いた。 けれど告白だということは伝わらず、親友だと直哉は言い切る。 そうじゃないんだ、ときちんと修正するにはまだ臆病で、出かかった声を呑むと、ひくつく口角を必死に上げて嗤うのが精一杯だった。 何も知らない、気付いていない直哉は、安心させるように俺の頭をくしゃくしゃと撫でて笑った。
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