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「こんにちは」
我らが生徒会長の椿から、一般生徒の転校生に話しかける。今までなかったことに誰もが口を閉ざして注目した。
「おう!挨拶されてもこのオムライスはやらないぞ!」
ああっ、別に誰もお前の食いかけなんて狙っちゃいないんだよ!
椿は皆月太陽の見当違いの発言にくすりと笑った。
「大丈夫、奪わないからゆっくり食べてね。ところで君は、転校生の皆月太陽くんかな?」
「?おう、太陽だぞ!お前は?」
皆月太陽の放った言葉に辺りがざわめく。
「西園寺さまをお前呼ばわりなんて……!」
「失礼だぞ転校生!」
周りの喧騒など気にしないように、椿は笑みを深くして応えた。
「突然だから驚かせてしまったね。僕はこの学園の生徒会長、西園寺 椿だよ。よろしくね」
「生徒会長……、すげーな!こちらこそよろしくな!!」
皆月太陽は握っていたスプーンを置いて椿に握手を求めた。それに答えた椿の行動にまた悲鳴が上がり、皆月がブンブンと力強く振ったことで更に悲鳴が上がる。
「うーん、なんか笑顔が引きつってないか?えらい立場だからって無理に笑う必要はないんだぞ?」
「っ、……へえ、そんなこと初めて言われたよ。面白い子だね、君。気に入っちゃった」
騒がしくなった周りのせいで2人がどんな会話をしたのか分からなかったが、椿は皆月の胸ぐらを掴んで立ち上がらせ、そのまま顔を傾けてキスをした。
キャアアアアアア
とても大きな悲鳴が上がった。誰もが青ざめて悲鳴をあげていた。
俺は、何も考えられなくなった。
警戒心の強い椿に限って一目惚れなんて絶対にありえないし、遊びのように簡単にキスをするなんて本当に訳が分からない。
いつだって真っ直ぐな椿が、好きだった。
「椿っ!!」
「……なに、和彰」
「なに、じゃないだろ……っ!何してるんだよお前っ」
「うーん、なんだろ。なんか、したくなっちゃった」
冷たさの滲む瞳に悲しくなり、堪えていた涙がこぼれる。
「見損なったぞ……っ!」
こんな酷く醜い顔、誰にも見られたくない。
椿に背を向けて食堂を走り抜けた。
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