転校生、皆月 太陽襲来!!

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優しい、彼だ。 もうこわくない。大丈夫。 そう自分に言い聞かせて、彼についたその赤を拭おうと近寄る。 その瞬間に彼は叫んだ。 「触るなっ!!!」 体が竦む。 「……まだ、興奮がおさまってないんで。すみません」 「僕こそ、ごめん……」 そのまま何も言えないでいると、 「先輩、申し訳ないんですけど後のこと頼んでいいですか。少し頭冷やしてきます」 ぺこ、と佐々木原くんと僕に頭を下げて彼は行ってしまった。 遠ざかっていく背中はあまりにも小さかった。 どうしよう、彼を傷つけてしまった…。 そのまま立ちつくしていると、佐々木原くんに声をかけられる。 「びっくりしたろ?あれ」 「……」 「だから気をつけろ、って言ったんだが。言葉が少なくて悪かったな!」 ガハハハと爽やかに笑う姿に肩の力が抜ける。 「でもま、あれでも俺たちの可愛い可愛い後輩だからさ。怖がんないでやってよ」 「……うん」 ただ彼に赤は似合わないなと思った。 ……………… 日が落ちて暗くなった廊下を歩く。 通りがかりにあった水道で頭から水をかける。 「っ…、はああああああああ」 肺の中の空気が全部出ちゃうんじゃないか、ってぐらい息を吐く。 シンクに鈍く映る俺の顔はカッコ悪かった。 「いつもの凛々しい俺の顔が台無しだ…」 本当は帰って飯を作らなきゃいけないんだけど、そんな気分には到底なれない。 すまん、慎ちゃん。 保健室でワイシャツ借りて、それで。 それで少し独りになりたい。
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