転校生、皆月 太陽襲来!!

7/15
前へ
/25ページ
次へ
優しい、彼だ。 もうこわくない。大丈夫。 そう自分に言い聞かせて、彼についたその赤を拭おうと近寄る。 その瞬間に彼は叫んだ。 「触るなっ!!!」 体が竦む。 「……まだ、興奮がおさまってないんで。すみません」 「僕こそ、ごめん……」 そのまま何も言えないでいると、 「先輩、申し訳ないんですけど後のこと頼んでいいですか。少し頭冷やしてきます」 ぺこ、と佐々木原くんと僕に頭を下げて彼は行ってしまった。 遠ざかっていく背中はあまりにも小さかった。 どうしよう、彼を傷つけてしまった…。 そのまま立ちつくしていると、佐々木原くんに声をかけられる。 「びっくりしたろ?あれ」 「……」 「だから気をつけろ、って言ったんだが。言葉が少なくて悪かったな!」 ガハハハと爽やかに笑う姿に肩の力が抜ける。 「でもま、あれでも俺たちの可愛い可愛い後輩だからさ。怖がんないでやってよ」 「……うん」 ただ彼に赤は似合わないなと思った。 ……………… 日が落ちて暗くなった廊下を歩く。 通りがかりにあった水道で頭から水をかける。 「っ…、はああああああああ」 肺の中の空気が全部出ちゃうんじゃないか、ってぐらい息を吐く。 シンクに鈍く映る俺の顔はカッコ悪かった。 「いつもの凛々しい俺の顔が台無しだ…」 本当は帰って飯を作らなきゃいけないんだけど、そんな気分には到底なれない。 すまん、慎ちゃん。 保健室でワイシャツ借りて、それで。 それで少し独りになりたい。
/25ページ

最初のコメントを投稿しよう!

141人が本棚に入れています
本棚に追加