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「和彰、奏、お昼に行こう」
昼休み、梓を引き連れた椿が教室の入口に立っていた。
「珍しいじゃん椿っちが誘いに来るなんて」
「たまには生徒会で食堂もいいかなと思ってね。購買ばかりじゃ味気ないだろう?」
「ま、俺はいいけどね〜。和っちは?」
こちらに視線を向けた奏に頷き、椿に向かい合う。
「よかった。それじゃあ行こうか」
椿は俺に目を合わせずに背を向けて歩き出した。昨日電話に出なかったことに腹を立てているのだろうか。いつもと違う様子に戸惑いよりもショックが大きかった。
慌てて椿の隣について謝る。
「おい椿っ、昨日は悪かった!
夕飯も食べずに朝まで寝てしまって気づかなかった。朝も時間がギリギリだったから直接聞けばいいかと思ってだな…」
「別に気にしてないよ。現実にまゆたんがいて、少しびっくりしちゃっただけだもんね?」
「あ、ああ」
「分かってるから、大丈夫」
そうは言っても、椿は俺の方を見ることは無かった。
椿の機嫌が治らないまま、食堂に着く。
入口の大きな扉を開けると、中から歓声が上がった。
「えっ、生徒会のみなさまがっ!」
「どうしよう僕、今日ちゃんとセットできてないんだけど!!」
「お弁当じゃなくて食堂にしてよかった…!!」
突然申し訳ないことをしたな、と内心思いつつ、俺たちの名前を呼んでくれる親衛隊に向かってそれぞれ挨拶しながら中に入っていく。
椿はにこにこと笑いながら(いつ機嫌が治ったんだ!!)声をかけ、奏は手を振りながらあちこちにちょっかいをかけに行き、梓が静かに微笑むだけで親衛隊の雄叫びが上がる。
「……あ、いた」
ぼそりと何かを椿が呟き、何を言ったのか聞く前に一直線に歩いていってしまった。
たどり着いた先には、オムライスを頬張っている皆月太陽がいた。
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