9/19

154人が本棚に入れています
本棚に追加
/90ページ
篠崎さんから告白された事は知っている。 貴良は基本的に質問すればなんでも教えてくれる。それはあたしの特権だと思ってる。 自惚れかもしれないけど、このくらいは自惚れたっていいじゃんね? 「付き合わないんじゃねえの。どうせ離れるし」 視線は漫画に落としたまま、自分の事なのにまるで他人の話しをするみたいに、貴良はそう答えた。 数ヶ月後、貴良は高校を卒業したら上京する事が決まっている。サッカーが有名な大学に推薦されたらしい。 あたしはサッカーの事なんてちんぷんかんぷんだけど、誰かが“あいつはプロに通用するレベルだ”って言ってたから、きっとすごく上手なんだと思う。 勉強も運動も、何をやらせても人並み以上に出来てしまう貴良は高校でそれはそれはかなりの過大評価を頂いている。 本人が多くを語らない分、噂はどんどんひとり歩きしてしまって、今では目出度(めでた)く“女たらし”の称号までついちゃって。 そんな男が、実はファーストキスもまだだなんて。 貴良を好きな女の子たちが知ったらきっと発狂するんだろうな。
/90ページ

最初のコメントを投稿しよう!

154人が本棚に入れています
本棚に追加