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「お前、うざい。離れろ」 あたしを離そうとするその大きな手をきゅっと控えめに掴む。 「ねえ、」 その刹那、少しだけ押す力が弱まって、音もなく視線が絡まった。 「あたしと、練習する?」 景山貴良を夢中にさせているのはサッカーだけ。 それは今までの貴良を見れば一目瞭然で、まさに周知の事実だった。 だから貴良を好きになっても、ほとんどの子が密かに思うだけに留まっていた。 けれど部活を引退して、サッカーから離れた今、貴良とお近づきになりたいと願っている女子はきっとあたしが想像しているより沢山いる。 たとえ付き合えなくても、たとえ後数ヶ月でこの街から離れるとしても。 それでもいいから、貴良に抱かれたいと願う子は沢山いて。 そしてあたしも、その中の1人に過ぎない。
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