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「っわ、」
ひょいっと軽々あたしの身体を抱き上げた貴良は、そのまま後方にあったベッドにあたしを無造作に下ろした。
あたしの顔の横に両の手を突いて、じっと此方を見下ろしてくる貴良の顔がとんでもないほど色っぽくて、胸が痛いくらいドキドキした。
ギシ、とスプリングが低く軋んで、綺麗な顔がぐんと近づいてくる。
「お前こそ、今更怖いとか言うなよ」
耳元で落とされた低い声に、脳まで痺れそうだった。
あんたが与えてくれるなら、恐怖でさえあたしは喜んで呑み込むよ。
そのくらい、好きなんだよ。
どうしたって言えない言葉を喉の熱で溶かして、小さく頷いてから、控えめにそのシャツを握った。
この行動が凶と出るか吉と出るか。
そんなのどっちかなんて分かんないし、もう既に泣いてばっかりの自分が浮かんでくるけど。
きっと、後悔の方が大きいのかもしれないけど。
それでもあたしは──…
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