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「うららも吸う?」 こてんと首を傾げて問われたそれに、もう一度酎ハイを喉に流し込んでから「うん」と頷いた。 「火つけてあげる~」 「ありがと」 ゆらゆらと目の前で揺れる赤をぼうっと見つめる。 成人して学んだこと、ふたつめ。 煙草も普通に吸える性分だという事に気付いた。 きっかけはサークルの飲み会で先輩に勧められた事だった。ほとんどの人が最初は噎せてしまうらしいけれど、あたしの場合は特になんともなかった。 それでも後味は苦いし独特の匂いがするから、頻繁に吸う事はない。 こうやって飲みの場で勧められた時だけ、たまーに吸うくらい。 ふぅーっと深く息を吐き出せば、まるで羽のような紫煙が目の前を舞う。 「あ、てかさ、同窓会のドレスどんなのにした?」 思い出したかのようにそう言ったミクの言葉を皮切りに、それぞれのドレスを見せ合う。 成人式の後、中学の同窓会がある。もうこれは何年も続いている伝統みたいなもんだ。 ホテルで行われる本格的なものだから当時の担任を受け持っていた教師から生徒まで、ほとんどの人が出席する。
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