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貴良が今一番新刊を楽しみにしてるあの漫画も、あたしには何ひとつ良さが分からなくて、もう読んでもいない。
なのにほぼ毎日本屋に通って貴良が好きそうな漫画を探してるんだから、ほんと、馬鹿みたいで笑っちゃう。
漫画がなきゃ貴良は絶対あたしの家になんか来てくれない。
それが分かってるから、馬鹿でも惨めでも、そうするしかなかったんだ。
そんなことを考えているとプチっという微かな音と共に、胸の締め付けが一気に無くなった。
どうやらブラのホックを外されたらしい。
もう早くも頭がくらくらしてきて、状況に理解が追いつくのが遅くなっている。
「うらら」
低くて透き通ったその声があたしの名前を呼ぶ。
それだけの事がいつも泣きそうなくらい嬉しい。
だって貴良が下の名前で呼んでる女の子って、あたししか居ないから。
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