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「い、ったぁ…い!」
貴良が腰を沈めた瞬間、感じた事のない痛みが広がって、叫ぶような声を張り上げた。
「やっ、たから、痛い…っんん」
悲痛に染まった声を上げていたあたしの唇に、貴良の唇が荒々しく重なった。
それが人生で初めてのキスだった。
せいぜい口を塞ぐためにしか使われないような、世界で一番、役に立たないキスだった。
痛いとか、待ってとか。
怖いとか、好きとか。
「ふっ、う、ぅ…っ」
そういうの、何も言わせてくれなかった。
何も聞いてくれなかった。
当たり前かもしれない。
だってあたし、貴良にとってなんでもないんだから。
大切にされないのは、きっと正しい。
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