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「──おい」
低い声が鼓膜を揺らし、次いで身体もゆさゆさと揺さぶられる感覚がして、閉じていた瞼をゆっくりと持ち上げた。
「…なぁんだ、服部じゃん」
「“なぁんだ”じゃねーっつの、お前こんなところで寝んなよ」
「だって眠いもん〜。それにほら、テーブルが冷たくって気持ちいいの」
へらりと笑いながらそう言えば、服部は「ったく…」と、やれやれ顔で溜め息を吐きながら此方に手を伸ばした。
「テーブルが冷たいんじゃなくて、お前が熱いんだろ」
すり、と。
骨張った指が控えめにあたしの頰の上を滑る。
こいつ、こんなに優しい触り方できるんだ、なんて。頭の隅っこでそんな事を思っていれば、ふっと顔の上に影が落ちてきた。
「一緒に、どっか行く?」
刹那、小さな声で落とされた言葉。
その響きが安っぽすぎて、笑えた。
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