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ふふ、と笑いながら立ち上がろうとしたら、まるでそれを拒むように大きな手に手首を掴まれた。 「…貴良?」 目を白黒させるあたしに、貴良は少し言いにくそうに口を開く。 「…さっき聞けなかったこと、聞いてもいい?」 「…え、なに?」 改まるような言い方に、思わずごくりと生唾を飲み込んだ。 貴良はそんなあたしの表情を伺うようにちらりと上目がちに視線を寄越す。 「お前さ、トラウマになったりしてねーの」 「…んん?」 めちゃくちゃ身構えていたけれど、貴良から投げかけられた言葉の意味がよく分からなかった。 トラウマって、なんのこと? 頭の上にクエスチョンマークを浮かべて首を傾げているあたしに貴良は補足するように言葉を付け足した。 「あん時、血出てたじゃん」 「……」 「すげえ痛かったんだろ」 ようやく貴良が何を言っているのかが理解できた。 これは“あの日”の話しだ。
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