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首元まで真っ赤になっていて、まるでそれが伝染ったようにあたしの身体も熱くなる。
「忘れられないんだよ、お前が」
「……」
「…どうしてくれんの」
消え入りそうな声が耳を掠めた刹那。
くい、と控えめな力で服を引っ張られて、胸が引っ掻き回されたみたいに苦しくなった。
ねえ、今度こそ期待してもいい?
“もしかして”って、思ってもいい?
「…いつか、笑えたら、それで良かったの」
言葉を落とす度に、さっき引っ込めた涙が込み上げてきて、視界を奪っていく。
「そういえばあんな事もあったよなって、あたしたち馬鹿だったなって。そうやって笑い合えたらって、そう思ってた」
「……」
「でも…全然笑えないの。全然、思い出になんかなってくんないの…っ」
初めてだとか、そんなこと本当はどうでもよくて、いつも、いつでも、貴良の一番になりたかった。
ふざけたり誤魔化したり、いつもそんな事しかできなかったけど、そうする事で少しでも傷を浅くしてきたけど。
「…っ好きだよ、貴良」
いつだって言いたかったのは、この言葉だけだ。
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