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涙交じりに零したその言葉に、目の前の貴良はきょとんとした表情をして「まじ?」なんて聞いてくるんだから、思わず笑ってしまう。
この男は、どんだけ鈍感なんだ。
まあそういうところも好きで仕方ないんだけど。
「…うらら、俺に怒ってねえの?」
「ふふ。なんで怒るの?」
「いや、だって血…」
ああ、そういえば貴良って血が大の苦手だったっけ。
「貴良の方がトラウマになってるじゃん」
「…うるせえ」
「そんなに気にしてるなら、今からでも“初めて”やり直す?」
くすくす笑いながらそう聞けば、貴良は赤い顔のままムッと眉を寄せて、此方に大きな手を伸ばした。
恐る恐るといった風に、あたしの指先に絡まりついた長い指先が、この上なく愛おしくて。
もうおんなじ気持ちを持ったあたし達に、口実はいらない。
だから、そうだなあ、
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