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「え、お前って仁木のこと好きなんじゃねーの?」
突然落とされた言葉は俺を狼狽えさせるには十分だった。「っな、…はぁ?」と焦ったような声を出す俺を他所に、爆弾のような発言をした張本人の悠馬は手元のコーラを涼しい顔でズズ、と啜った。
東京を観光しに来た悠馬とこのハンバーガー屋で落ち合ったのはつい30分前のことだ。
いきなり“仁木と連絡取ってんの?”と聞いてきた悠馬に“取ってない、そんな仲じゃねえし”と答えたところで、冒頭の一言が返ってきた。
自分を落ち着かせるようにひとつ息を吐き出してから呑気にポテトをつまんでいる悠馬に向かって再び口を開く。
「なにを根拠にそう思ってんだよ」
「だって貴良、俺がどんな女見せてもいっつも“うららのほうが可愛い”とか言うじゃん」
「……そうだっけ?」
「いや、うん、そうだけど。あれ?俺てっきりあれお前の牽制だと思ってたけど、違うの?」
きょとんとした顔でそう聞かれて多少の気まずさを感じながらも小さく頷けば、悠馬はまたポテトに手を伸ばしながら「なんだそれ」と笑った。
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