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「ほんとに〜?なんか顔色良くないよぉ?」
「っ」
煌びやかなネイルが施された指先が伸びてきて、目にかかるほどの俺の前髪をふわりと持ち上げた。
反射的に身を後ろに引けば背凭れにぶつかり、その衝撃でガタンッと音が立つ。
驚いたようにきょとんと目を丸くするその子に一度謝ってから「ちょっと、トイレ」と、すぐに立ち上がり、その場から逃げるように立ち去った。
「…はぁ、」
蛇口からジャーと勢いよく流れてくる水を見つめながら、小さく溜め息を落とした。
ベタベタと触られるのは好きじゃないのに、何故か大学に入学してからあんな感じで触られる回数が増えた気がする。
アルコールが入るせいか?
なんにしろ、必要以上に距離を詰めてくるのはやめてほしい。
未だに名前、思い出せねえし。
「木下…?いや、木内だっけ?」
まあどっちでもいいか、と自己完結して、ドアノブに手をかける。
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