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「あ、やっと出てきた!」
「……」
「ねぇ、ほんとに大丈夫?体調悪いなら私が送って──」
伸びてきた手を今度こそパシンッと振り払う。
「まじで、無理」
「……」
俺のその言葉に傷ついたような表情を見せたその子に一応ごめん、と一言謝ってから、居酒屋を後にする。
真っ暗に染まった夜道を歩きながら、服の裾で何度も唇を拭ってみるけど、一向に気持ち悪さは拭えなかった。
「……っくそ」
小さく声を吐き出して、頭を抱えるようにその場にしゃがみ込む。
なんで……
なんであいつの、うららの顔ばっか浮かぶんだよ。
『じゃあ好きとかじゃねーんだ?』
悠馬の声が、このタイミングで頭を過った。
そんなの知らねえよ。
分かんねえよ。
でも、すげえ会いたい。
もうずっと、あいつに会いたくて、たまらねえんだ。
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