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つまり、だ。
うららと気持ちは通じ合ったけど、恋人らしい時間はまだ一度も過ごせていない。
最後に会ったあの日も俺が帰る時、うららは寝てしまっていたから別れの挨拶もできなかったし。
『…って貴良?聞いてる?』
正直もう、こうして声を交わすだけじゃ足りなくなっている。
せめて顔が見たいし、ちょっとでいいから触れたい。
『おーい?あれ、切れた?………いや、繋がってる。…んん〜?電波悪い?』
俺から何も反応がない事に焦っているらしく、それでもずっと喋り続けているのが面白くて、思わずぷっと噴き出すように笑ってしまった。
『あ!聞こえてんじゃん!』
「……」
『って、ちょっと!なんでまた黙るの!?ねえ〜〜』
だってなんか、口開いたら馬鹿みたいなこと口走りそうだし。
「…お前は平気なの?」
『っえ?何が?』
「…いや…」
みんなこういう時、どうしてんだろ。
「……なんでもない」
好きな奴に会いたくてたまらない時、一体どうやって、このもどかしさを乗り越えてんだろう。
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