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◇
「ちょっとあんた、さっきから何うろうろしてんのよ」
そわそわと落ち着きなくそこら辺を歩き回っていると、怪訝そうな目つきをしたお母さんにそう一喝されてしまった。
「だって!今日やっと貴良が帰ってくるんだよ!?」
そう。
今日は待ちに待った、貴良の帰省の日だ。もうこの日をどれだけ待ったか分からない。
朝からわくわくしすぎてどうにも興奮が抑えられなくなりそうだったから、わざわざ実家まで出向いたというわけだ。
「こんなの落ち着いてられないでしょ!!」
「まったく…貴良くんはあんたなんかのどこがいいんだろうね」
溜め息混じりに吐き出される悪態も今は全然気にならない。「なんとでも言えば!」と強気な声を返して鼻息を荒くするあたしにお母さんはもう一度溜め息を吐き出してから口を開いた。
「でも、貴良くん大丈夫なの?」
「え?大丈夫って何が?」
「何がって…あんた、外見てないの?」
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