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じとりとした眼差しを向けるあたしなんて物ともしないお母さんは、つらっとした表情のまま、まるでハエか何かを払うようにシッシッと手で示した。
「とりあえず早く自分の家に帰りなさい。帰れなくなったら大変でしょ」
ごもっともな意見に小さく頷く事しか出来ず、のそのそと帰り支度を始める。
実家から自宅に帰る間はというと、それはもう最悪だった。
まず寒いなんて言うもんじゃないし、顔面には引っ切り無しに雪が飛んでくるから目もろくに開けられない状態。
自宅のマンションに着く頃には髪もアウターもびっしょりと濡れてしまっていた。
あたしが住んでるこの地でこんなに吹雪になるのはそうそうない事だ。
そうそうない事なのに、なんで今日、こんな事になるの。
「……」
貴良、大丈夫なのかな…。
部屋の壁に掛けている時計を確認すると、もうとっくにバスの出発時間は過ぎていた。
無事に乗れたのかなと心配していると、鞄の中に入れっぱなしにしてあったスマホが着信を知らせる音を発した。
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