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「っもしもし貴良!?」
飛びつくようにそれを手にしてすぐさま通話に繋げれば『うらら?』と、あたしを呼ぶ低い声が聞こえた。
その響きで胸がきゅうーっとなった……までは良かったんだけど、ザザッというノイズが強くて、すぐに眉を寄せる。
「うん。貴良、バス乗れた?」
『──た…けど、──で、っそ』
「っえ?なんて?電波悪くて聞こえなっ」
途切れ途切れにしか貴良の声が聞こえなくて聞き返した次の瞬間、ザァーッとものすごい雑音が響いて、思わず耳からそれを少し離す。
そして数秒後にプツッと通話が切れてしまった。
すぐに掛け直したものの『電源が入っていません』のアナウンスが流れる。
何度掛けてもその繰り返しで、一向に通話が繋がる事はなかった。一応メッセージも送ってみたけれど既読はつかない。
もしかして、充電切れちゃったとかいうオチ…?
電話で何を言ってるか全然分からなかったから、帰ってこれるのかどうか、どっちなのか分からない。
帰ってきてほしいけど、危ないんじゃないかという心配もある。それに充電が切れたならあたしの家まで辿り着けないんじゃないかとか。
もう、いろんな感情がぐちゃぐちゃになって、泣き出してしまいそうだった。
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