イノセントを口実に、

おまけ

貴良があたしに覆いかぶさる。

ギシリと低く啼くスプリングと共鳴するみたいに、「好きだよ」って。

もう何年も欲しくてたまらなかった言葉が鼓膜を揺さぶって、その響きにくらくらして、ドキドキして、涙が溢れてきた。

つぅ…っと伝う涙を拭うように押さえつけられた唇が、あたしのそれに重なる。

あたしの涙でしょっぱくなったそのキスを受け入れていると、冷たい手が服の裾から入り込んできて、びくんっと身体が跳ね上がった。

「っひゃ、貴良…っ」

その大きな手を慌ててがしりと掴めば、貴良は頬を赤く染めたまま、はぁーっと長い溜め息を吐き出しながらあたしの肩口に額を擦りつけるように顔を隠した。

「本当はもっと、ゆっくり…って思ってたんだよ」

「…貴良？」

「なのに、全然我慢できねえの」

小さく掠れた声でそう言いながら、もう一度はぁ、と息を吐き出して、ちらりと目だけであたしを見上げる。

まるで捨てられた子犬ようなその瞳が可愛すぎて、もうきゅんきゅんを通り越して、胸がぎゅんぎゅんした。