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「そんな事だろうと思って、ちゃんと否定してあげたからね!“貴良はそんな事する奴じゃないよ〜”って。だってまだキスもしたことない純情ボーイだもんね?」
ケラケラ笑いながらそう言えば、貴良はぎろりと鋭い眼差しを送って「うぜ」と呟いた。
「別に否定とかしなくていいのに。くだんねえ」
吐き捨てるようにそう言っては、話しは終わりだとばかりに再び漫画に視線を落とした。
貴良とあたしは小さい頃…それこそ幼稚園の年長の頃からの付き合いになる。
小さい頃の貴良はどちらかというとすぐに泣いてしまうような物静かな子供だったけれど、小学生に上がってサッカーを始めてから、みるみるうちに身体的にも精神的にも逞しく成長した。
それからずっと、貴良を夢中にさせているのはサッカーだけ。
貴良にとって恋愛や勉強は二の次なのだ。
「篠崎さんとは?付き合わないの?」
ぽり。ぽり。
手元のポッキーが短くなっていくにつれ、口の中にじんわりと甘さが広がっていく。
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