告白の代わりにありがとうを

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仕事中、パソコンの画面の上部に社内メールの着信を知らせるポップアップが表示された。 私はいつものように開いてみる。 『送別会のお知らせ』 そこには、今月末で東京本社から、横浜支店に異動する佐伯 蓮飛(さえき れんと)主任の送別会の詳細が書かれている。 そっか。 後2週間でいなくなっちゃうんだ。 佐伯主任は、私が入社した時からずっとお世話になってきた先輩社員。 3年先輩の彼は、右も左も分からない私をいつも優しくサポートしてくれた。 そんな彼を、私は、いつから男性として見るようになったんだろう。 気付いたら、好きになってた。 でも、ずっと一緒に仕事をする関係なのに、思いを伝える勇気は私にはなくて…… だから、ずっと先輩社員を慕う後輩社員としての関係を保ってきた。 だけど…… このままでいいの? 何も伝えないまま、さよならしてしまって後悔しない? 私は自問自答する。 私は、仕事帰りに買い物に行った。 ずっとお世話になってきた佐伯主任に、せめて感謝の意だけでも伝えたい。 邪魔にならなくて、使ってもらえそうな物…… あまり高価な物だと、逆に気を遣わせてしまうかもしれない。 いろいろ見て回った結果、私は万年筆を買った。 名前の刻印をお願いして帰路に就く。 万年筆なら、ずっと佐伯さんの胸ポケットに入れておいてもらえる。 私はそばにいられなくても、代わりにずっとそばにいられる。 それって、幸せなことじゃない? 例え、思いが届かなくても。
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