告白の代わりにありがとうを

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その時、今回の幹事を務める宇多(うだ)さんが、宴会場の隅にある、カラオケセットのマイクを持って立ち上がった。 「それでは皆さん、こちらを向いてください。佐伯主任は、どうぞこちらへ」 宇多さんは、佐伯主任をミニステージへと呼び寄せる。 「はぁぁ……、一体、何が始まるんだ?」 佐伯主任は、私を見て尋ねるけれど、私も知らない。 私が首を横に振るのを見て、諦めたように立ち上がった。 「それではここで、質問タイム〜!」 カラオケセット傍にあったタンバリンを賑やかにシャラシャラと振って鳴らす。 もう一本のマイクを佐伯主任に手渡し、質問が始まった。 「3秒以内に即答してくださいね。  では、第1問! 血液型は、何型?」 「A型」 「星座は、何座?」 「天秤座」 「好きな食べ物は?」 「ハンバーグ」 ぽんぽんと質問と答えがやり取りされる。 そうして数問答えた後、宇多さんが尋ねた。 「好きな女性のタイプは?」 えっ…… 気になる。 私は、耳をそば立てて答えを待つ。 「……優しい子かな」 優しい子…… ありがちな答え。 続いて宇多さんは尋ねる。 「好きな人はいる?」 えっ? 突然の質問に私は息をのんだ。 好きな人……いるのかな? ドキドキしながら、返事を待つ。 「……いるよ」 おおー!! 野太い歓声が、あちらこちらから上がる。 「誰だ? 誰だ?」 「名前も言っちゃえ!」 あちらこちらから、野次(やじ)が飛ぶ。 「言うわけないだろ!  ほら、宇多、次の質問は?」 佐伯主任は、宇多さんに先を促す。 好きな人……いるんだ。 呆然とする私は、その後の質問はほとんど耳に入ってこなかった。 そうして、2時間ほどで送別会は終了した。
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