第1話 まさかのありがとう

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第1話 まさかのありがとう

アパートへ帰ると鍵を掛けたはずのドアが開いていた。 「え……まさか泥棒?」 隙間から、そうっと覗くと月明かりに人影が浮かんだ。 刹那、玄関に飛んで来た泥棒がブンッと腕を振り下ろす。 「きゃあー」 「これを見ろ!」 目の前に突きつけられたビニール袋の中で黒い点が蠢いている。 「アリが10匹。挨拶がわりだ」 「け、警察……」 震える手で鞄のスマホをまさぐる。 「待て。これはどうだ?」 男が上着から取り出した小袋に『ありが(とう)』と書いてある。*1) 「果糖だから砂糖より甘くダイエットにもなる」 侵入者の顔は見えないが、いかにも得意そうだ。 「け……結構です」 スマホが指先に当たる。 「まあ待て、こっちは無人島リゾートで自然を満喫できるぞ」 『ありが(とう)へようこそ!』と言うチラシが広げられる。                        *2) 「お金無いし……つ、通報します」 「落ち着け、これならどうだ?」 *1) www.amazon.co.jp/ ありが糖 Amazon | アマゾン公式サイト (2021/3/28アクセス) *2) www.arigatou-survival.com/facility   無人島キャンプ場「ありが島」の施設紹介 (2021/3/28アクセス)
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