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「で、その客引き(キャッチ)の効果はどないなん、サナヲ?」  クレオパトラみたいなツヤツヤのボブを揺らし、花ちゃんが聞いた。 「うーん……予約は増えたけど指名は増えてないって感じ」 「サナヲが怖かったんやろな」 「私なりにがんばってるんだけどなぁ」 「その調子で気張りや」  エリア3位の成績を誇る花ちゃんは、目を細めて後輩の努力を労ってくれた。トップを狙えと店長にはっぱをかけられている彼女だけど、本人曰く、3番目という位置が落ち着くらしい。  職場のサロンが入っているデパートの屋上は緑化されていて、お天気の日はとても気持ちがいい。友達とひだまりで過ごすランチタイム。それは暗く引きこもっていた頃には知らなかった、至福の時間だ。いつも3人でとるお昼休憩なのに、今日は芽里衣(めりい)がまだ来ていない。 「ねぇ、芽里衣遅いね。施術が長引いちゃってるのかな?」 「いや、もうそこに来てるで」 「え、どこ?」 「……あなたの後ろ」 「わぁっ?!」  背後から聞こえた声に、思わず身震いする。振り向くと芽里衣がふわふわの茶髪を揺らして笑っていた。 「もぉ! いつもそうやって脅かすんだから」 「ごめんごめん、サナヲちゃん可愛いからつい、ね?」  そう言ってくれるけど、本当に可愛いのは芽里衣のほうだ。陶器みたいな肌に、フランス人形ばりのぱっちり二重(ふたえ)。少し語尾の上がるしゃべり方までチャーミングで、嫉妬する気にもならない。
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