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確かに、と思いながらも、私は口を挟まなかった。ポンポン言う花ちゃんとおっとりした芽里衣の会話は、聞いている方がおもしろい。
「ゴミを捨てに行ったら目が合っちゃってね? なんだか他人とは思えなくて、つい」
「他犬やけどな」
「他犬とは思えなくて、つい」
律儀に言い直す芽里衣がおかしくて、マスクの下の唇が弓形になる。自然と目も細まっていたらしく、芽里衣が嬉しそうに笑った。
「ほらぁ、サナヲちゃんも可愛いと思ってくれてるよ?」
芽里衣が私越しに花ちゃんを覗き込むと、対抗意識を燃やしたのか、彼女もスマホを取り出した。
「うちのUMAも可愛いで! 昨日ベストショットが撮れたんや! 見て!」
「このユーマ君、お食事中?」
「エサのネズミを丸呑みした直後。こん時が特に可愛いんよ。喉のとこがぽこっと膨らんでな、リスみたいな顔になんねん」
花ちゃんが自慢げに見せてくれた画面には、顔の下あたりが横に広がった茶色い蛇が写っている。確かに見ようによっては可愛いけど、そこに詰まっているのが断末魔のネズミだと思うとやや複雑だ。
「蛇の喉ってどこにあるの?」
芽里衣が天然な質問を繰り出し、花ちゃんは呆れ顔で白い手をパタパタ振った。
「知らんがな。イメージや、イメージ」
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