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「サナヲちゃんはさ、何か写真ないの? 噂の彼氏さんの写メ見せてよ」  スマホをしまった芽里衣に水を向けられ、ドキッとする。3ヶ月前からつきあい始めた小栗さんは、優しくて真面目な自慢の彼氏。一緒に撮った写真はあるけど、笑うとキツネみたいな糸目になる彼のことを、二人はかっこいいって言ってくれるかな。 「サナヲの彼氏、忙しそうやねんな。あんま会えてないんやろ?」 「うん……子どもたちに呼ばれて全国飛び回ってるみたい。断れない性格なんだよね」 「へぇぇ! 人気者ですごい。どうやって知り合ったの?」 「えー、なんか恥ずかしいなぁ」 「運命の出会いやんな? サナヲが自販機の前で小銭落としてな、拾おうとしたら同じタイミングで手ぇ伸ばしてきた彼と、十円玉の上で人差し指が、濃・厚・接・触、したんやって」 「キャーーーーッ!!」  芽里衣が笑顔で歓声を上げる。屋上にいる人たちの注目を浴び、私は思わず顔を伏せた。明るいところでたくさんの人に見られるのには、まだ慣れない。 「あ、サナヲちゃん、ごめんね?」 「サナヲはシャイやからなぁ」  二人といるのは楽しいけど、長年日陰にいた身にはときどき眩しすぎる。うつむいてマスクの位置を調整する私の頭を、花ちゃんがポンポンと叩いた。 「堂々としとき。大丈夫。自分、キレイやで」
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