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「サナヲちゃん?」
芽里衣に心配そうに覗き込まれ、私は自分が黙り込んでいたことにハッとした。
「あ、ご、ごめん」
「あのときは怖かったよね。私、何にもできなくてごめんね?」
芽里衣が申し訳なさそうな顔で、べっこう飴を差し出した。シンプルな甘みが懐かしい、私の好物。
「これ食べて元気出して? それに、また何かあったら言ってね。さとるくんに助けてもらってもいいし。電話したら必ず出てくれるし、とっても物知りで頼りになるのよ?」
「芽里衣は結局、自分の彼氏自慢したいだけやんな」
「そんなことないわよぅ!」
「わざわざさとるくんに電話せんでも、呼んだら小栗さんがすっとんで来るやろがい」
「それもそっか」
おしとやかに笑う芽里衣も、こう見えてフェンシングの達人だ。あのときは接客中で不在だっただけで、もしもあの場にいたら、ためらわずに男の急所を突いてくれただろう。
女が平和に生きるには、自衛が不可欠なご時世なのだ。
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