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季節は巡って或る日、高木は原田を自分の展覧会に招待した。
原田は高木夫妻の前で高木の最新作の絵を見る段になって、「おう、これは正に知る人ぞ知る逸品絵画でありますなあ」と通ぶって言った。それに対し、「これは今日初めて展示した絵です」と高木が正直に言ったので原田は自分の半可通を暴露した形になり、顔から火が出る思いをした。すると、「憚りながら確かに逸品絵画に違いございませんわ。流石、原田社長、お目が高くていらっしゃいますわ」と同じく絵を見る目がない玲子は透かさずフォローした。内心、同情して。
展覧会が終わった後、このことを振り返って、「嘘には違いないが、思いやりのある嘘だ」と高木が言うと、玲子は得意げに言った。
「仁の心が言わせた嘘ね」
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