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 新藤竜彦、即ち玲子の父は、高木と出かけ翌昼帰って来た玲子がラブホテルで過ごしたことをスマホの位置ナビで知ると、こうしてはいられないと親友の画商、松本道夫に頼み込んで高木の数々の絵をギャラリーに展示してもらった。  松本は高木が発表会に恵まれるようにプロモートする為、彼の作品を持ち出しては美術館やキュレーターに紹介して回り、買ってくれそうな顧客も回り、高木の為に奔走した。また、自分のギャラリーで展覧会を開催するだけでなくアートフェアに赴いてブースに展示して売り込み、オークションにも出品して高木の為に、そして親友の為に奔走し続けた。その孜々として取り組んだ成果が実って高木の大規模な国際的展覧会を開催するに至った。  斯くして高木を音に聞く画家と肩を並べるマエストロにすることに成功し、我が愛娘に相応しい恋人とした竜彦は、政略結婚を画策する原田にその息子との縁談を持ちかけられる前に玲子と高木の恋を二人に気兼ねさせることなく成就させ、二人を結婚させることにも成功した。  その結婚式は無論、この上なく盛大なものになった。高木は仁の心で竜彦の心を打ち、玲子の心をも打ち、その結果、至高の幸福を勝ち取った次第だ。
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