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玄関ホールでアリスはまだ湿っているブーツを履いていた。
「もう帰るの? ゆっくりしていけばいいのに」
「わたしには世界中を巡る使命がありますから」
「そっか……」
「アイカさんはこれからどうるすんです?」
「そうね、あの豚どもを追っ払って……財産もあらかた整理して。それから私も世界を旅しようかな」
「世界は思ったより広いですよ」
「うん。ねえ、アリス。最後にいまからでも一緒に食事していかない? とっておきのラム肉があるの」
「ロボットは食事できませんから」
「うそつき。人間と同じように味を感じるし食事ができるように設計してあるのを知っているわ」
「えへへ……実はあの……わたし羊って、苦手なんです。それに……寂しくなっちゃいますから」
「そっか……じゃあ元気で、アリス」
「アイカさんも」
玄関が開かれる。
妹は一歩踏み出して、姉がその背中を見送った。
雪上に小さい足跡がまっすぐ伸びていく。
珍しく吹雪は止んでいた。
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