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第2話 お前を認めない
ガートルード・ランフランク。高校三年。スペイン人で親の都合により日本にやって来た。
日本語堪能、一年、二年の時の成績はほぼ学年トップ。調子が悪いときがあっても最低で三位。空手部主将で男女共に尊敬を集めている。
「だけど一つ! ランフランク先輩のことで謎なことがあるという……」
昨日ランフランクを一目見ていたく気に入ったらしい金町志織が、教室で兄から更に引き出したらしい情報を授業の間の千流と亜未に披露した後に、妙に深刻な顔を大袈裟に作って勿体ぶる。
そんな友人に亜未は「謎ねえー」と適当に相槌を打つ。
「なんとランフランク先輩……モテモテなのに、何故か! 二年間、恋人がいない! という!!」
「へーそう」
「なんでだろう!? 硬派!っていうのは、まあ、印象的にはプラスだけど! ね、どう思う、千流ちゃん!?」
「……さあ――ね」
化け物の考えることなど自分たちにわかるはずがない。自分たちは人間なのだから。
しかし目があった翌日、奴は今日も普通に学校に来ているらしい。千流の正体に気づいていない間抜けか。所詮由緒正しい家から出ていない間抜けな退魔師たちの目は誤魔化せても、自分の目は誤魔化せない。
「今日の部活応援に行こうかなあー」
「私は先に帰るわ。用事あるし」
「えー」
奴に夢中な志織には悪いが――悪の芽は摘み取らせてもらう。部活後の時間に奴と人きりになれるように、既に準備はしておいた。
告白のための手紙と見せかけたものを下駄箱に仕掛けておいた。人間の上手く目を偽りの誠実さで騙せているなら、きっと奴は千流の誘いに乗るだろう。
部活が終わるまでの間の時間――千流は一度家に帰り、手持ちの退魔道具の数を用心深く確認してから、心身を高めるため道場で瞑想、一人稽古に励んだ。
空手部主将だろうが、こちらは幼少の頃からずっと武道をやっていたのだ。恐れることなどあるはずがない。
約束の時間まで、心を穏やかに鋭く、最高まで高めて、退魔道具の刀を片手に再び夜の学校へ赴いた。
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