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第十話 なめんなよ
両手両足を土蔵の柱にくくりつけられている野武士の前に、天母様とノノが座っている。
野武士は一杯の酒を貰いいくらか機嫌が良くなった様だ。
天母様が野武士に聞いた。
「じゃ、色々教えて貰おうかな」
「ケッ、やっぱりそうくるか。残念だが、酒を貰ったくらいでペラペラしゃべるような俺じゃないぜ」
「まあ、それはどうかしら」
「ああ?」
「先ず、あなた達の人数と本拠地、それと持ってる種子島の数を教えて」
種子島とは火縄銃の事だ。
それを聞いて野武士はゲラゲラ笑いだした。
「ハハハ、こいつやっぱり阿呆だな。可愛く聞きゃ誰でも答えるとでも思ってんのかよ、バーカ」
「あらまあ、口の悪い事。いいのかしら、そんな事言って」
「ほう、脅しかい。そんな事したって無駄だぜ。おれはこう見えても死に目を見てきたんだからよ」
「あなた達の頭(かしら)の名前は『エド・スミス』よね」
野武士の顔色が一瞬にして変わった。
しかし『エド・スミス』って外国人っぽい名前だ。
「おまえ、なんでそれを知ってんだ」
「私は天母様よ。なめないで欲しいわ。そして彼は六尺(約百八十センチ)を超える大男で、髪の色が金色で瞳の色が青い。しかし、見た人は必ず殺される」
野武士は何も言わずに天母様を見ている。
天母様が続けた。
「これを私が知っているっていうだけでも、あなたはもう戻れないはずよ。殺されちゃうかも知れないからね」
天母様はしたり顔で続けた。
「それと、もう一つ言おうか。彼は部下の野武士が持ってきた利益の半分を撮ってきた本人のものにする制度をとっている。それに、何もとってこれなくても、最低限の報酬は約束している。そうやって仲間をどんどん増やしていっている。そうよね」
「おいおい、もう一回聞くぜ。なんで知ってんだ」
「それは言えないわ。でも当たってるでしょ。いい加減観念したら」
野武士は一つ大きなため息をつき、ゆっくりと話し始めた。
「本拠地は仙人山の麓にある。野武士の数は約五百人、女子供を含めると六百人くらいになる。種子島は二百丁くらいだ」
「まあ、ちょっとした町ね」
「今も野武士を集めて日に日に大きくなっている」
「じゃ、もう一つ教えて。エド・スミスの目的は何?」
「わからねえ。しきりに何かを探している様だが、それが何だかはさっぱりわからん」
天母様は頷いて野武士に言った。
「ありがとう。よく言ってくれたわね。あとで縄を解いてもらうわ。あと、食事と布団もね。じゃ、おやすみ」
そう言って天母様は土蔵から出ていき、ノノもそれに付いていった。
後ほど、宮司さんが縄を解き、食事と布団が運ばれた。
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