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第十二話 ノノちゃんのお仕事
「ねえノノちゃん。あなた未来から来たって言うけど、目的は何?」
天母様は境内で木工作業をしている村人達を見ながら聞いてきた。
「お宝を探しに来たの」
「お宝? 金銀財宝の事?」
「いや、そういうのじゃなくて、創作物。ああ、工芸品って言った方がわかりやすいかな」
「工芸品? それがお宝なの?」
「うん。私達の未来では金や銀は自由に作り出せるから、それ自体にはそんなに価値はないんだ。でも、人が作った工芸品は世界中で一つしかないから、それが高く売れる事があるの」
「へえ、それがここにあるっていうの?」
「うん、そう。でも、まだみつからないんだ」
「へえ。工芸品ね」
その時、ノノの頭に付いているネコ耳型のレーダーが反応した。
この反応は『お宝レーダー』だ。
それは一人の青年に反応していた。
彼は平鉋(ひらかんな)で木を削っているが、その度にレーダーが反応する。
ノノは天母様に尋ねた。
「ねえ、あの青年はだれ?」
「ああ、あの子ね。陣ちゃん。陣三郎君よ」
「じんざぶろう?」
(あ、そう言えば、この辺って確か左甚五郎のゆかりの地だよな。時代はまだ先だけど、なんか関係あるのかな?)
「あの子は小さい時からとても手先が器用でね。なんでも自分で作っちゃうのよ。ほら、本殿の欄間もあの子が彫ったのよ」
ノノは振り返って欄間を見上げた。
それは昇り龍で、子供が彫ったとはとても思えない見事な出来だった。
「ええ、これをあの子が彫ったの? すごいね」
「うん、すごいよね」
(ひょっとして、あの陣三郎って子の創作物が今回のお宝なのかな)
そう思いながら、ノノはしばらく彼の作業を見守っていた。
木くずをまるで羽衣の様に舞い上げる鉋(かんな)さばきは、見ていて気持ちがよかった。
「プッ、ハハハハッ」
突然天母様が笑いだした。
ノノは首を傾げて聞いた。
「何がおかしいの?」
「ん?なんでもないわ。怒られちゃうから」
「え?気になるよ」
「だって、小っちゃい女の子が、自分より大きい陣ちゃんの事『あの子』って。何かおかしくて、ハハハ」
天母様は腹を抱えて笑いだした。
「だから小っちゃくないよ。んもう…」
とノノは言って見たものの、天母様の笑いは止まらない。
(ま、いいか)
気がつくとノノも一緒に笑っていた。
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