23人が本棚に入れています
本棚に追加
第十七話 野草?夜襲!
すっかり寝静まった夜。
ノノは息苦しさで目が覚めた。
「く、苦しい」
顔に柔らかく大きな塊が押し付けられている。
気が付くと、天母様に抱きつかれていた。
「ちょ、ちょっと、天母様。苦しいよ。私抱き枕じゃないんだから」
「ううん、いいじゃない。もうちょっと抱かせてえ、むにゃむにゃ。。。。。」
「もう、しょうがないな」
ノノはもう少し我慢する事にした。
と、その時、突然外の鳴子が鳴り出した。
カラカラカラカラ
「天母様、起きて。夜襲ですよ」
「むにゃむにゃ。。。ええ。。。野草???」
「なに寝ぼけてんの。夜襲です。野武士が来ました」
「え、夜襲っ!」
やっと起きた天母様とノノが境内に駆け付けると、倒れている二人の野武士とその横に立っている元の助がいた。
元の助は刀を抜いていた。
天母様が声を掛けた。
「元ちゃん。この人達は?」
「野武士です。夜襲です」
「二人だけ?」
「おそらく」
「殺しちゃったの?」
「いえ、気絶させただけです」
天母様とノノはほっと胸をなでおろした。
ノノが天母様に尋ねた。
「陣三郎君をさらいに来たのかな」
「たぶんそうね」
「この二人どうする?」
「そうね。縛り付けておきましょう」
(縛るの好きだなあ、この人)
二人の野武士は土蔵の柱に縛り付けられた。
元ちゃんと同じ様に。
反省部屋だろうか、ここは。
翌日、天母様の元に再び使者が来た。
境内に現れた彼は下半身がウンコまみれだった。
きっと落とし穴に落ちたのだろう。
(可哀想に……)
ウンコまみれの使者は気丈にも天母様に口上を述べ始めた。
「此度の我々の襲撃を駆逐した件については、我らが頭は非常に称賛されている。よって、この村に襲撃することは今後はやらない事を約束する。それで、条件であるが、村人の陣三郎殿と直接話がしたいと申しておられる。よろしいか」
陣三郎君を直接説得しようという算段らしい。
つまりスカウトだ。
天母様は腕を組んで答えた。
「ちょっと何なのその言い方。人にものを頼むんなら頼み方ってあるでしょ」
「もし断るのなら、こちらにも考えがあるが」
「なにそれ。脅しのつもり?」
天母様にしてはめずらしく語気が荒い。
その時、向こうから陣三郎君の声が聞こえてきた。
「天母様。おらは構わねえ」
「陣三郎君。いいの?」
「大丈夫だ。おら、この村を出たいなんて微塵も思ってねえ」
「陣三郎君」
天母様は少し考えて答えた。
「わかったわ。陣三郎君と直接話してもいいわ。その代わり、場所はここの本殿よ。いいわね」
「わかった。その旨頭に伝え置く」
そう言って、境内から出ていこうとした使者を天母様は呼び止めた。
「ちょっと待って、忘れ者よ。もってきなさい」
といって土蔵から出された二人の野武士を指さした。
使者は二人を連れて境内から出ていった。
ドスン、バシャン!
また穴に落ちた様だ。
最初のコメントを投稿しよう!