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第二話 死なせない
「お前さん、何なんだ」
十兵衛の声に、妙な服装の幼女が答えた。
「申し遅れました。私はノノって言います。未来から来たトレジャーハンターです」
ちなみにその幼女の格好は全身にピッタリとしたモモヒキの様なものを着て、腰と胸に硬い布の様な物を巻いている。そして頭には猫の耳が付いている。
十兵衛はくのいちかと思ったが、あのコケ方から見てそれは違うだろう。
「ええと、ノノさんかい。そのトレジャ何とかって、なんじゃい」
「あ、そうですよね。私はお宝を探して、今から千年位先の未来から来ました。あ、大丈夫ですよ。人に危害は加えませんから」
「あんた、猫か狸が化けてるんじゃないだろうな」
ノノは「あっ」と、頭の猫耳を触って答えた。
「あ、これですね。これはレーダーとか通信機です。本物の耳じゃないですよ。まあ、デザインは私が選んだんですけどね。かわいいでしょ」
「ようわからんが、額の傷が痛々しいぞ」
「ううん、確かにちょっとヒリヒリします。って、こんな事言ってる場合じゃないんですって十兵衛さん。何で赤ちゃんを川に捨てようとしたんですか」
十兵衛は横にいるお静さんをチラリと見て答えた。
「食いもんが何もねえんだ」
「食べ物が?」
「んだ。度重なる戦で畑は荒され、やっと出来た作物もお武家様に年貢として持ってかれてしまう。やっと残った食料も野武士が根こそぎ奪ってく」
「ホントですか」
「そんなんだから、おら達はしばらくろくなもん食ってねえ。お静も乳が出ねえし。だからどっちにしろ赤ん坊は死んでしまうんだ」
ノノは十兵衛さんが持っている箱の中の赤ちゃんを見た。
赤ちゃんは弱っていて、息をするのもやっとと言う状態だ。
(これじゃ死んじゃう。時間が無い)
ノノはそう思い、夫婦に言った。
「私、この赤ちゃん絶対死なせないよ」
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