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第七話 駆け込み神社
赤ちゃんを連れて行こうとした野武士を打ちのめしたノノ。
間一髪を救ったはずなのに十兵衛さんの表情は険しかった。
「ノノちゃん、なんて事してくれただ。あいつら、きっと仕返しにくる」
ノノはそれを聞いてやっと我に帰った。
「あ、そうか。ごめんなさい、ついカッとなっちゃって」
「まあ、殺しちまったもんは仕方ねえ」
「殺してないよ。ちょっと気絶させただけ」
「殺してねえだか」
十兵衛さんは倒れている野武士を見た。
ノノは十兵衛さんに 説明した
「あれは体術っていう護身術なの。人を殺めるものじゃないから」
「そか。よし」
十兵衛さんは何か閃いた様だ。
「こいつを柱に縛っておこう」
「え?」
「戦いになった時の人質だ」
「人質? 十兵衛さん、本気で野武士と戦う気?」
「んだ。もうこれは避けられねえ」
「でも相手は曲がりなりにも武士だよ。勝ち目はあるの?」
「わからねえ。これから天母様に相談に行くだ」
「テンボサマ?」
「ああ、神社にいるだ。今まで、色んな奇策で村を救ってくれたお方だ」
「その人に頼めば助けてくれるかも知れないって事?」
「そだ」
「わかった。私も手伝うよ」
「そか。すまんな」
「いいよ。私のせいだもん」
そしてノノと十兵衛は野武士を頑丈な柱に縛り付け、お静と赤ちゃんを連れて神社に向かった。
◇◇◇
十分程歩くと長い石段があり、それを登ると鳥居が見えた。その鳥居の向こうに杉林に囲まれた神社があった。
建物は古いけど、きれいに手入れされている。
十兵衛は真っ直ぐ傍らの社務所に入り、中の人を呼ぶと初老の男性が出て来た。
宮司さんらしい。
「おや十兵衛さん。どうなされました。ん? 見慣れない子ですな」
宮司さんはノノを不思議そうに見た。
十兵衛さんが答えた。
「この子はノノっていうだ。何やら未来から来たらしい」
「そうですか」
宮司さんは特に驚いた感じは無かった。
十兵衛さんが説明を始めた。
「野武士の件で困った事が起きてのお。天母様に相談したいんじゃが」
「そうですか。それはお困りですな。ただ今呼んで参りますので、上がってお待ちください」
そう言って宮司さんは奥に下がって行った。
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