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第八話 天母様
十兵衛さんが説明を始めた。
「野武士の件で困った事が起きてのお。天母様に相談したいんじゃが」
「そうですか。それはお困りですな。ただ今呼んで参りますので、上がってお待ちください」
そう言って宮司さんは奥に下がって行った。
ノノ達は玄関横の畳の敷かれた部屋で待っていた。
縁側から聴こえてくる蝉の声で、さっきの野武士騒動で荒ぶった心が静まって行く。
スッと
ふすまが開き、一人の女性が入って来た。
巫女服に身を包み、長い黒髪を後ろで束ねた利発そうな人だ。お静さんと同じくらいの歳だろうか。
(この人が天母様かな)
十兵衛さんが先に挨拶をした。
「天母様。野武士の事でちょっと困った事になってのう」
「ええ、今宮司さんから聞いたわ。……って何この子、かわいい〜♡」
と、いきなりノノに抱きついてきた。
ノノは豊満な胸に顔を埋められ、危うく窒息しそうになった。
「プハッ! あ、あの、すいません。苦しいのでそれ位にしてもらえますか」
「あら、ごめんなさい。あなたがノノちゃんね。小っちゃくてかわいいから、つい」
(カチン!)
「小っちゃくないです。こう見えても私十六なんです」
「あら、私と同い年。どうしてそんなに小っちゃいの」
(カチン!カチン!)
「だから小っちゃくないです、って、ええ! あなたも十六? 二十代後半かと思ったよ」
「よく言われるのよね。ちなみに、お静も同い年よ」
ガーン!
未来では小っちゃいってバカにされ、ここに来て同い年がすごく大人。しかもお静さん、結婚して子供まで産んじゃってるよ。
(なんかすごい敗北感……)
色々かなりショックだったが、ノノは気を取り直して説明をした。
自分は未来から来たトレジャーハンターである事。
タイムトラベルの副作用で体が小さくなった事。
そしてここに来てから、
赤ちゃんに牛の乳を飲ませて助けた事。
野武士を追っ払う為に打ちのめした事。
野武士を一人人質として捕らえている事。
天母様は少し考えた後、決断した。
「やっぱり戦うしか無さそうね」
それを聞いて十兵衛はうなずいた。
天母様は続けた。
「野武士の素行には私も憤慨していた所よ。村人全員をここに集め、籠城しましょう。そしてやって来た野武士を片っ端から叩きのめしましょう」
ノノが返した。
「でも、どうやって? 相手は野武士でも、手練(てだれ)の武士だよ」
「大丈夫。考えがあるわ。食料も少しくらいならあるしね。まず、十兵衛さんちにくくりつけられてる野武士をここに連れて来て。色々聞きたい事があるわ」
その後、ノノと十兵衛と宮司さんで、十兵衛の家に行き、人質の野武士を神社に連れて来た。
そして土蔵の柱に括り付けた。
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