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息を切らして、ようやく、見慣れたマンションの前に着いた。
息が、苦しくて、咳混んでしまった。
ハアハア、
まだ落ち着かない息を、整えた。
部屋の、明かりは、消えていた。
一瞬よぎる、嫌な予感を、さえぎり
慌てて、エレベーターに乗る。
15階のボタンを、押して、早く、早く
ついてくれ。と、気持ちだけが、焦る。
ピンポンと、15階のところで、
エレベーターの扉が開く。
俺は、部屋の前まで、走っている。
鞄から、慌てて、部屋の鍵を開けようとして
鍵が、空いている。
『幸樹』名前を、呼びながら
部屋の扉を開く。
ベランダの窓が開いていて、冷たい風が
部屋の中を、通り抜ける。
ベランダの縁に、腰掛ける幸樹を見つけた。
『なあ、幸樹、悪い冗談は、止めてくれ。俺が
悪かった。だから、そこから、降りてくれ。
頼む。幸樹、お願いだから、危ない真似は、止してくれ。』
そうすると、幸樹は、こちらを、哀しげに
見つめて
「おかえりなさい。かっちゃん。僕は、疲れたみたいなんだ。暗い部屋で、かっちゃんの帰りを、待つことにも、かっちゃんが、もう、僕には、興味がないことも。かっちゃん、いつから
こうなったんだろうね。あの頃に、戻れるなら
かっちゃんは、僕のこと、ずっと愛してくれたかな?かっちゃん、だめだよ。寝てる時に、
僕以外の名前を、寝言で、言ったら、傷つくなぁ。」
かっちゃんは、嘘つきだな。と、
幸樹は、涙を流しながら、時折り、涙を拭きながら、笑って、ああ、でもね。幸せだったよ。と微笑んだ。
緊張の、瞬間だ。目の前には、いつも、
どんな時にも、そばにいてくれた幸樹がいる。
手を差し出せば、届くだろうか。
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