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エピソード3
幸樹は、相変わらず、ベランダの縁に座って
僕を、見つめている。
何故、こうなったんだ。
俺は、土下座しながら、幸樹に、一生懸命
説得している。
すると、幸樹が、
「かっちゃんが、そうしてるのは、僕のためでも、なんでもないね。自分を、守るためでしょう?僕が、ここから、飛び降りたら、困るから
ただ、それだけだよね?僕は、かっちゃんに、
何を、期待して、何を、待っていたんだろうな。こんな風にしても、何もないのにさ。
余計に、惨めになるだけなのにね。ハハッ」
俺は、にぎりこぶしを、ぎゅっと握って
あながち、幸樹が、言っていることは、
間違いではないことを、実感していたんだ。
本当は、自分のせいに、したくなくて、
幸樹に、目の前で、死なれたら、困るからだ。
全部、自分自身の為だと、痛感していた。
上辺だけの、甘っちょろい気持ちなんて
メッキが、剥がれやすいだけなんだ。
俺は、何も、言えずにいた。
ただ、黙るだけだった。そんな俺を見て
幸樹は、「かっちゃん、今になって正直だね。
いつも、嘘ばかり、言っていたから、今も、
嘘をつくのかな?って、嘘でも、僕が、大切だよって言ってくれるのかな?って思ったんだけどな。かっちゃんは、ずるいね。」
俺は、幸樹に、
『幸樹に、死んでほしくない。これは、嘘じゃない。幸樹を、失いたくないのも、真実『ほんとう』だ。だけど、自分の、気持ちは、わからない。』
そう言うと、「知ってるよ。そんなこと」
幸樹は、今にでも、そのまま、消えてしまいそうだった。
ベランダから、俺を、見つめたまま
かっちゃん、サヨナラの時間だ。バイバイ
俺は、幸樹を、抱きかかえようとして、
幸樹は、今まで見たことのない笑顔を見せて
両手を広げて、まるで、最初に、出会った頃に
感じた天使のように、暗闇に、消えて行きそうで
俺は、一生懸命に、幸樹の腕を、掴んで
必死で、引き上げた。
よかった。間に合って、汗だくな俺を見て
「かっちゃん、何故助けたの?生きていても
意味などないのに」
俺は、黙ったまま、幸樹を、抱きしめて
『よかった。生きていてくれるだけでいいんだよ。よかった。』
幸樹は、俺の腕を、振り解いて
ベランダから、部屋の中に、俺を、すり抜けて
入って行った。
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