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すると、少しずつ閲覧数は増えてきた。相変わらず序盤でブラウザバックされてしまっている気配はあったが、少しは成果があったと思ってもいいだろう。しかし、誰も感想をくれる様子がないし、イイネも増えていかない。そんなに絡みづらい人だと思われてしまったのか、ハードルが高い要求であるように思われてしまったのか。ただちょっと元気が出るようなコメントを書いてくれたらいいのに――涼音がそう思っていた、ある日のことである。
『こんにちは。最近、ご自分の感想を求める掲示板を乱立させていますが、マナー違反なのでやめてください。それと、意見を欲しいと言いながらポジティブ感想だけ求めるのはあまり賛成できません。褒め言葉だけ貰っても、成長できませんよ』
なんだこいつ、と涼音はむっとした。さくら、というシンプルな名前のユーザーである。そんなことを言うほど偉い人間なのかと思いきや、フォロワー総数はさほど多くない。精々、コンテストで時折入選している程度の作者だ。確かに投稿を始めたばかりの自分よりもベテランであるのかもしれないが、そんな偉そうなことを言われる筋合いなどこちらにはないのである。
褒め言葉だけ欲しい、そう思うのが何がいけないのか。
成長?褒め言葉を貰って、長所を伸ばしていこうと考えることだって十分成長の余地だというのに。
最初はこんな書き込みは無視してやろうと思っていた。残念ながら自分の立てた掲示板であっても、他の人の書き込みを削除する権限は自分にはない。それでも無視しておけば、そのうち相手も飽きて忘れていくはずだと思ったのである。
だが、やがて涼音の立てた感想を求める掲示板が、次から次へと運営権限で削除されるようになった。同一内容のトピックス乱立、が荒らし行為と認識されたらしい。誰かが通報したのだ、と涼音は激怒した。そして、通報したとしたらあの書き込みをした“さくら”というユーザーしかあり得ないと。
本来ならあのような“荒らし(自分から言わせればあっちが荒らしだ)”など無視するべきだとわかっていたが、さすがに通報なんて汚いやり方に出られるのは我慢ならなかった。涼音は直接、彼女のプロフィールまで言ってメッセージ機能を使い、メッセージを送ることにしたのである。
『私の掲示板を通報して削除させたのはあなたですか!迷惑です、私のことが気に食わないからってやめてください。荒らしはそっちでしょ』
大学生の涼音と違い、向こうは仕事をしているのか平日の朝昼はちっとも返信が来なかった。相手(恐らく女性)がレスを返してきたのは夜になってからのことである。
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